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横浜地方裁判所 昭和54年(ワ)229号 判決 1981年2月24日

原告 花上勉 外一一名

被告 全国労働者共済生活協同組合連合会 外一名

主文

一  原告らの請求は、いずれもこれを棄却する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一当事者の求める裁判

一  請求の趣旨

1  原告らと被告全国労働者共済生活協同組合連合会との間に雇用関係が存在しないことを確認する。

2  原告らが被告中央労働者共済生活協同組合連合会に対し雇用契約上の権利を有することを確認する。

3  訴訟費用は被告らの負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

1  本案前の申立

(一) 原告らの訴を却下する。

(二) 訴訟費用は原告らの負担とする。

2  本案についての答弁

主文同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  被告全国労働者共済生活協同組合連合会(以下「全労済」という。)は、労働者の共済事業を主たる事業とする消費生活協同組合法上の生活協同組合の全国的連合体であり、被告中央労働者共済生活協同組合連合会(以下「中央労済」という。)は、群馬県を除く関東の一都五県及び山梨、長野、静岡の各県に設置された右同様の生活協同組合(以下、全国各都道府県に設置された生活協同組合を「単協」という。)の地域的連合体である。

2  原告らは別紙記載の年月日に被告中央労済と雇用契約を締結し、その従業員となつた。

3  しかるに、被告らは、原告らに対し、原告らが被告全労済の従業員であり、被告中央労済の従業員ではないと主張している。

よつて、原告らは、請求の趣旨記載の判決を求める。

二  本案前の主張

被告中央労済は、昭和五一年一〇月一五日、訴外近畿労済連合会(以下「近畿労済」という。)及び全国三九単協とともに被告全労済に組織統合(以下「本件組織統合」という。)したのであるが、原告らは本件組織統合後においては、被告全労済神奈川県本部で勤務して、被告全労済の職務を行い、被告全労済から給与の支給を受け、その間、被告らとの間に何ら雇用関係をめぐる具体的紛争を惹起していないし、統合後において、統合前に比し、何らの不利益も受けていないのであるから、原告らが本訴の前提とする被告らに対する関係での身分上の不安定なるものは何ら現実性をおびたものではなく、又、仮に法律上の不安定が存在するとしても、原告らの請求を認容する確認判決によつて右不安定状態が除去されることにはならないから、以上、いずれの点からみても本訴請求は確認の利益を欠くので、訴の却下を求める。

三  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実を認める。

2  請求原因2の事実について。

(一) 原告花上、同大久保、同江並、同町田、同向原、同塩谷、同渡部が、それぞれ主張の日に被告中央労済と雇用契約を締結し、その従業員となつたことは認める。

(二) 原告佐藤、同目黒が、主張の日に被告中央労済の従業員となつたとの点を否認する。原告佐藤は、昭和四二年二月一日、同目黒は、昭和四一年四月一日、それぞれ訴外神奈川県労働者共済生活協同組合(以下「神奈川労済」という。)と雇用契約を締結し、その従業員となり、昭和四四年三月、被告中央労済に身分移籍してその従業員となつたものである。

(三) 原告加藤、同立川、同杉沢が、それぞれ主張の日に被告中央労済の従業員となつたとの点を否認する。

四  抗弁

1  原告加藤、同立川、同杉沢について。

原告加藤及び同杉沢は、昭和五二年五月九日、同立川は、同年二月一四日、いずれも被告全労済と雇用契約を締結し、その従業員となつた。

2  全原告について(ただし、右1記載の三名については予備的)。

(一) 被告中央労済が、昭和五一年一〇月一五日、訴外近畿労済及び全国三九単協とともに被告全労済に組織統合したことは前記のとおりであるが、本件組織統合は、被告中央労済、訴外近畿労済及び全国三九単協が被告全労済に対してその取扱う共済契約の大部分、その有する財産の大部分、その雇用する職員の全部を移転するもので、商法上の会社合併や営業譲渡に比肩されるものである。しかして、会社合併の場合に、合併前の雇用関係が当然に合併後の会社に移行することは自明であるし、営業譲渡の場合も、雇用関係がそのまま営業譲受人との間に移行するものと解される。本件組織統合については、右の合併又は営業譲渡の法理が類推適用されるべきであるから、原告らの使用者は、本件組織統合により当然に被告中央労済から被告全労済に移転したものである。

(二) 仮に、本件組織統合による雇用関係の移転につき、原告らの承諾を要するとしても、原告らは、本件組織統合後本訴提起まで退職することなく、被告全労済の事務所において、同被告の職務に従事し、同被告から給与の支給を受けて今日に至つているのであるから、原告らは、雇用関係の移転につき黙示の承諾をしたといえる。

(三) 仮に、右(二)の主張が認められないとしても、原告らは、本件組織統合によつて何らの不利益をも被らないのに反し、もし被告らが、原告らの請求に従つて原告らのみを統合前の状態で別格に扱うとするならば、被告らにおける団体的秩序は重大な損害を被らざるを得ず、原告らの本訴請求の実現による実質的利益が皆無であるのに比して、被告ら及び全国労済組織の受ける不利益が甚大であることを考慮すれば、原告らの請求は、権利の濫用として棄却されるべきである。

五  本案前の主張に対する反論

原告らと被告らとの間に雇用関係をめぐる争いが存在すること自体が具体的紛争であり、原告らの主張を被告らが争うことが原告らの地位の不安定を惹起しているのであつて、これを除去するには、本件確認訴訟を提起する以外に途はないから、確認の利益の存在することはいうまでもない(なお、使用者が誰かということは、労働者にとつて重大関心事であり、現実の問題としても、配置転換を命ぜられたり、一時金が減額されたり、有給休暇の日数が削られるなどの不利益を受けるおそれがある。)。

六  抗弁に対する認否

1  抗弁1の事実を否認する。

2  抗弁2の(一)の事実について。

本件組織統合と称する事実があつたことは認めるが、この「組織統合」なるものは、法律上の根拠がないことは勿論、個別的雇用関係に与える効果が全く不明確なものである。即ち原告らの勤務する職場には「中央労済神奈川支所」の看板が掲げられており、原告らの健康保険の保険契約者も被告中央労済であるなど、その実態は甚だしい混乱の中にある。その余の主張については争う。本件「組織統合」が合併と同視できる状態にないことは、消費生活協同組合法第六五条ないし第六八条の手続がとられていないこと及び組織統合によつて消滅する筈の被告中央労済が依然存続していることの二点に照して明白である。また、消費生活協同組合法には、営業譲渡に関する規定はおかれておらず、そのための手続規定も存しないから、「営業譲渡」なる事態を同法が予測していないことは明白である。

3  抗弁2の(二)の事実を否認する。

原告らが雇用契約関係の移転につき黙示的にでもあれこれを承諾した事実は全くなく、むしろ、一貫して身分移籍に不同意の意思表示を表明しつづけていたものである。

また、被告中央労済の従業員で組織された労働組合である訴外中央労済労働組合(以下「労組」という。)は、昭和五二年一二月一四日、被告両名に対し、被告全労済への身分移籍は無効であり、被告中央労済の従業員の雇用契約は被告全労済へは譲渡されえないことを通告した。なお、訴外労組所属の従業員の雇用契約上の地位の移転は、訴外労組の「規約」所定の労働協約の締結ないしはこれに準ずる重要な事項にあたり、大会の決議を必要とするところ、かかる決議がなされたことはないので、訴外労組が前記身分移籍を承諾したことはない。

4  抗弁2(三)の事実を否認する。

理由

第一本案前の主張について。

一  本件の訴は、原告らが、被告全労済との間に雇用契約関係がなく、被告中央労済との間に雇用契約関係を有するという、原告らの法律上の地位の確認を求めるものであるところ、被告らは、原告ら主張の法的地位(被告中央労済の従業員であること)を否認し、或は、これと相容れない地位(被告全労済の従業員であること)を主張しているものであるから、これにより原告らの法的地位が不安定になつていることは明らかで、原告らは、被告らに対し、自己の法的地位の積極的或は消極的確認を求める必要性があるものといわざるをえない。よつて本件の訴には確認の利益があるものと認められる。

二  被告らは、原告らが被告全労済の従業員であつても、被告中央労済の従業員であることに比して、その労働条件には何らの不利益も存在しないので、法的地位に不安定な状態はないと主張するが、いやしくも雇用契約関係が、誰と誰との間に存在するかという点に紛争が存在する以上、たとえ個別的な労働条件には格別の不利益がないとしても雇用契約上の地位が不安定な状態にあるものというべきであるから、被告らの右主張は理由がない。

第二本案について。

一  請求原因1の事実について

この事実は、当事者間に争いがない。

二  請求原因2の事実について

1  原告花上、同大久保、同江並、同町田、同向原、同塩谷、同渡部が、それぞれ、別紙記載の年月日に、被告中央労済と雇用契約を締結し、その従業員となつたことは当事者間に争いがない。

2  原告佐藤、同目黒について

成立に争いがない乙第一九号証の一(原告佐藤について)、乙第二〇号証の一(原告目黒について)、証人酒居忠美の証言、原告佐藤本人尋問の結果及び弁論の全趣旨を総合すると、原告佐藤は、昭和四二年一二月一日、同目黒は、昭和四一年四月一日、それぞれ神奈川労済と雇用契約を締結し、その従業員となつたこと、神奈川労済は、昭和四四年三月、東京、静岡、山梨、埼玉、千葉、栃木及び茨城の各都県の単協とともに被告中央労済へ組織統合する旨の契約を締結したこと、この際、右契約中において、右原告ら神奈川労済の従業員はいずれも以後被告中央労済の従業員とされる旨の合意がなされ、右原告らもこれを承諾し、そのころから被告中央労済の従業員として稼働するようになつたこと、以上の事実が認められ、この事実によれば、右原告らは、昭和四四年三月から被告中央労済の従業員たる地位にあつたものと認められる。

3  原告加藤、同立川、同杉沢が、それぞれ主張の日に被告中央労済の従業員となつたことを認めるに足りる証拠はない。

三  抗弁について

1  原告加藤、同立川、同杉沢について

成立に争いがない乙第二四号証の一、二(原告加藤、同杉沢について)、乙第二三号証の一、二(原告立川について)、証人酒居忠美の証言を総合すれば、原告加藤及び同杉沢は、昭和五二年五月九日、同立川は、同年二月一四日、いずれも被告全労済と雇用契約を締結し、その従業員となつたことが認められる。

もつとも、成立に争いがない甲第一〇号証によれば、右原告らのうち立川については、同人宛の採用内定通知が、中央労済理事長岡本丑太郎名義でなされている事実が認められるけれども、右内定通知には、全労済中央労済地方本部理事長名の印が押捺されており、更に前掲乙第二三号証の二及び証人酒居忠美の証言によれば、右取扱がなされた理由は、同人の採用が内定したのが被告全労済への組織統合直後であつたため、たまたま残つていた古い様式の用紙を使用したにすぎないこと、被告全労済において、一般会社等における辞令に相当するものとされている「総務通信」において、被告全労済が、同人を正式に採用したものとして公表したことが認められるので、右甲第一〇号証によつても前記認定を左右し得ず、他にこれを覆すに足る証拠はない(なお、右原告らに関する甲第七号証の三、四、五、原告加藤に関する甲第九号証の二、同杉沢に関する甲第九号証の四については、後記2(四)記載のとおりである。)。

2  原告加藤、同立川、同杉沢を除くその余の原告らについて

(一) 成立に争いがない乙第三一号証、原告本人佐藤健夫の供述により真正に成立したものと認める甲第一七号証、証人酒居忠美の証言によれば、本件組織統合は、被告ら並びに訴外近畿労済及び全国三二単協が、昭和五一年八月一日に締結した契約であつて、全国各単協及びその地域的連合体である連合会(被告中央労済及び訴外近畿労済)の労済運動における共同行動を強化することを目的として、右契約の当事者は、運動方針、共済事業、損益会計及び機関事務局を被告全労済に統一することとし、その具体的方法としては、それぞれの連合会及び単協の統合日(昭和五一年一一月一日)前日現在の財産目録及び貸借対照表上の資産並びに負債を統合日を期して被告全労済に移転すること、被告全労済は、統合日をもつて、右連合会及び単協の現に正規職員として常勤雇用している職員を、被告全労済の職員として引継ぎ雇用すること、右連合会及び単協は、その組合員と締結した各種共済契約のすべて(ただし、総合共済契約を除く。)を共済契約移転期日である昭和五一年一一月一日を期して被告全労済に移転することを内容とするものであることが認められる。

(二) しかして、右契約の法的性質如何が問題となるところ、右認定の事実によれば、それは、右連合会及び単協の所有する有形、無形の営業用財産(右連合会及び単協の営業を組織している動産、不動産、無体財産権、債権、債務等あらゆる財産的価値を有するもの。)及び共済契約の組合員関係をも含めた地位の被告全労済への一括譲渡を内容とする混合契約に他ならないものと認められ、法人の包括的な地位譲渡と評価される。そして、かかる地位譲渡の典型例としては、合併と営業譲渡との二形態があるが、本件では、消費生活協同組合法所定の合併手続がとられておらず、譲渡人たる右連合会及び単協は、組織統合後も消滅することなく存続するのであるから、営業譲渡に準ずる「事業の譲渡」と解するのが相当である。

原告らは、消費生活協同組合法には、営業譲渡に関する規定がなく、そのような事態は同法の予測しないところであると主張するけれども、商法上の営業譲渡に準ずる「事業の譲渡」を認めることが同法の精神に反するものとは考えられないので、原告らの右主張は採用しない。

(三) そこで、本件組織統合が右のような法的性質を有すると考えた場合、これによつて右原告らの地位に如何なる変化が生ずるかを検討する。

被告らが、訴外近畿労済及び各単協とともに、統合日をもつて、右原告らを被告全労済の職員として引継ぎ雇用する旨の合意をしたことは、前記認定のとおりである。

ところで、民法第六二五条第一項は、使用者は、労務者の承諾なき限り、その権利を第三者に譲渡し得ない旨を規定し、雇用契約について、同法第四六六条第一項の例外を定めているところ、本件についても同条の適用があるのか、それとも営業譲渡契約の特殊性からかかる労務者の承諾は不要で、当然に雇用契約上の地位の移転が生じるのかが問題となる。

前記のとおり、右原告らは、被告中央労済神奈川支所の従業員として、右支所所掌の共済事業及び右支所の運営に従事してきた者であるが、これによれば、右原告らは、一定規模の企業活動を営む被告中央労済の企業組織の中に有機的に組み入れられ、組織づけられた一員たる地位にあつたものと考えるのが相当である。

ところで、営業譲渡とは、一般にかかる有機的一体をなした企業そのものの譲渡に他ならず、本件もまたその一場合であると解されるところ、このような場合、右原告らと企業そのものとの一体性に鑑み、右原告らの雇用契約関係も当然に被告中央労済から被告全労済に譲渡されたものと考えるのが相当である(もとより、営業譲渡に際し、雇用契約関係が当然に承継される旨を定めた一般的規定は存しないが、船員法第四三条が、船舶所有者の変更(相続等包括承継を除く。)があつたときは、船員の雇用契約は当然に終了し、この終了の時から船員と新所有者との間に従前と同一条件の雇入契約が存するものとみなされる旨の規定をおいていることも本件の解決につき示唆を与えるものであるし、また、商法第一〇三条が、企業組織の変更を伴わない会社の吸収合併、新設合併の場合、存続又は新設の会社は、合併によつて消滅した会社の権利義務を当然承継する旨の規定をおいて、労働者の地位の当然移転を定めているのも企業組織の変更を伴わない企業主体の変更の一場合である本件事案の解決につき、一つの根拠を与えるものと考えられる。)。

(四) なお、前掲甲第一七号証によれば、被告全労済が、昭和五二年四月二一日付で労済労働組合全国協議会(以下「労協」という。)に対して「営業譲渡論が共済契約の移転ということであるとするなら共済契約の移転は、現生協法上ではできないという確認をしている」旨の回答をしたことが認められ(第一一頁)、この事実によれば、昭和五一年一一月一日以後においても営業譲渡に準ずる事業の譲渡は行われていなかつたのではないかとの疑いが存するが、同法立法当初は、都道府県の区域を越える連合会で地域によるものは「会員たる組合の指導、連絡、調整に関する事業」以外の事業を行えなかつたのが(当時の消費生活協同組合法第一〇条第三項)、昭和二九年法律第八一号により右第三項が削除されたため、右のような連合会も各単協と同様「組合員の生活の共済を図る事業(同法第一〇条第一項第四号)」を行えることになつたのであるから、連合会が他の連合会や単協から共済契約を譲受け、以後これに関する業務を行うことも可能なわけであり、したがつて、共済契約の移転ができない旨の右回答は、その回答当時、被告全労済の事務手続の遅延により共済契約の移転が未了であつたために、さしあたりその移転が可能である旨の回答を見合せたにすぎないものと解され、右回答の存在をもつて事業の譲渡がなされていたとの前記認定は左右されない。なお、同じく前掲甲第一七号証によれば、被告全労済が、その時「共済契約の移転は行わない」旨回答したことも認められるが(第九頁)、これも右回答と同趣旨であるから、やはり当時共済契約の移転が未了であつたためこれを行うとの回答を避けたものと考えられ、したがつて、この回答によつても前記認定が左右されるものではない。

また、前掲酒居証言により真正に成立したものと認める乙第一号証によれば、被告全労済、被告中央労済、労協及び労組が、昭和五三年一〇月三〇日、被告中央労済とそこに雇用されている労働組合員との間で締結されていた労働契約は、同日をもつて被告全労済と右組合員との労働契約として引継ぐものとすることを内容とする協定を締結したこと、さらに、同証言によつて真正に成立したものと認める乙第二号証の一によれば、被告全労済、被告中央労済及び労組が、前同日、前同様の協定を締結したことがそれぞれ認められ、加えて、成立に争いがない甲第六号証によれば、被告全労済は、その第三二回通常総会議案書において、被告全労済が、労協と昭和五三年一二月一九日、全労済本部で身分移籍の調印を行い、これにより熊本を除いて全国的に職員の全労済への身分移籍が完了した旨報告したことが認められ、これらの事実によると、被告全労済が、右原告らの身分移籍の時期について一貫しない態度をとつているのではないかということが問題となるけれども、右昭和五三年一〇月三〇日は労働組合との間で身分の引継ぎを合意した日であるというにすぎず、また、昭和五三年一二月一九日は、身分移籍の事務手続の終了日と解されるから、以上の日時のくいちがいは昭和五一年一一月一日の右原告らの雇用契約関係の移転そのものの認定に消長を来すものではない。

次に、成立に争いがない甲第七号証の一ないし一二によれば、本件組織統合の後である昭和五三年三月になつても、原告らの職場において、職員管理表として被告中央労済名義の用紙が使用されていたことが認められ、また、成立に争いがない甲第八号証によれば、昭和五三年六月六日頃、原告らの職場において「給与額変更について」と題する書面が被告中央労済名義の用紙を用いて作成されたことが認められるので、本件組織統合後においても、原告らの職場において被告中央労済名義の用紙が多数使用されていたことがうかがわれるけれども、証人酒居忠美の証言によれば、これは、前掲甲第一〇号証と同様被告全労済が、その所有する用紙を資材節約のために使用したにすぎないものと解されるからこれら証拠によつても右認定及び判断を左右するに足りない。

さらに、成立に争いがない甲第九号証の一ないし五によれば、本件組織統合後においても、原告のうち佐藤、加藤、町田、杉沢、江並に交付された健康保険被保険者証の事業所欄が、いずれも被告中央労済とされていることが認められ、また、成立に争いがない甲第一二号証によれば、本件組織統合の後である昭和五二年一二月末日満期の火災共済継続申込書の名宛人が被告中央労済名義となつていることが認められるけれども、前掲酒居証言によれば、右中央労済名義のものは全労済名義に変更すべきものであるところ、その手続が遅延しているにすぎないものと解されるので、これら事実によつても右認定及び判断が左右されるものではない。

(五) 以上のことから、本件組織統合によつて右原告らと被告中央労済との間の雇用契約関係は、統合日である昭和五一年一一月一日を期して右原告らの承諾を要することなく被告全労済との間に移転されたものというべきである。

第三結論

よつて、その余の点につき判断するまでもなく、原告らの被告全労済との間の雇用契約関係が存在しないこと及び被告中央労済との間の雇用契約関係が存在することの確認を求める本訴請求は、いずれも失当であるからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条、第九三条第一項本文の規定を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 三井哲夫 吉崎直弥 嘉村孝)

(別紙省略)

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